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本作にかけられた黒釉(こくゆう)は、鉄分を多く含む丹波の土と登り窯の還元炎が生み出した艶やかな漆黒です。光が当たると、黒の中にほんのりと緑味や褐色が揺らぎ、茶室の行灯や蝋燭の灯りを柔らかく映し返します。器面に散る金色の斑点は、焼成中に灰が熔け込んで生じた“胡麻(ごま)”と呼ばれる景色で、静かな黒の中に星屑をちりばめたかのような趣きを添えています。
腰をやや張り、口縁に向かってわずかに内へ抱え込む“筒茶碗”に近いシルエットは、点前の際に茶がふくよかに立ち上がるよう計算されたものです。轆轤(ろくろ)成形後、指で軽く押し締めたゆるやかな凹凸が胴にリズムを与え、余白のある黒釉を単調に見せません。口造りは四方をほんのり角に取り、柔らかな不定形を残すことで、利休の侘び茶に通じる素朴な表情を纏わせています。
高台脇に覗く粗目の胎土は、花崗岩を含む丹波の山土をほとんど精製せずに使うことで得られる野趣そのものです。厚めに削り残した高台がどっしりと器を支え、抹茶を点てた際の安定感を高めています。焼成は三昼夜以上薪を焚き続ける登り窯で行われ、炎の流れや灰の降り方が一点一点異なる唯一無二の景色を刻み込みました。
市野信水様は、初代から受け継いだ轆轤技術に独自の感性を加え、丹波古窯には珍しい“黒釉”の可能性を探求してこられました。鉄量の調整や焼成雰囲気の微細なコントロールによって、重たくなりがちな黒釉に透明感と深みを与え、現代の茶席にも映える洗練を実現しています。
抹茶の発色:漆黒の釉肌が、点てた抹茶の鮮やかな緑を際立たせ、客人の目を楽しませます。
持ちやすさ:胴の凹凸が指掛かりとなり、熱を含んだ茶碗でも安定して持ち上げられます。
四季適応:筒形に近いため保温性が高く、炉の季節に最適。薄茶にも濃茶にも使える包容力があります。
ご使用前に軽く水通ししてからお点前いただくと、茶渋が均一に染み込み美しい景色に育ちます。
使用後はぬるま湯で優しく洗い、柔らかい布で水気を拭き取ってから陰干ししてください。
黒釉の艶は使うほどに落ち着きを増し、胡麻の金色がより際立ちます。経年変化こそ本作の醍醐味です。
漆黒の深みに星のまたたきを閉じ込めたかのような、市野信水様の丹波黒釉茶盌。野趣と端正さが共存するこの一碗が、茶席に静かな緊張感と温もりをもたらし、日々の一服を格別なひとときへと導いてくれることでしょう。どうぞ末永くお手元で育て、時とともに深まる侘びの景色をお楽しみくださいませ。
作陶歴
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